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生存者支援のためのガイドライン草案

ICBL生存者支援ワーキンググループ 翻訳:小林裕美子(ALF)

25以上の、国際的な人道主義者と開発機構からなるICBL生存者支援ワーキンググループ(ICBL Working Group on Survivor Assistance)は、世界の何十万人もの地雷の被害者に 対して包括的なリハビリテーションを形作り、促進するための一連の原理とガイドラインを公表する。

地雷禁止条約は1999年3月に発効される。この条約は関係 国に対し、地雷被災生存者への支援を"最大限に"提供する ことを要求している。そうするべき地位にある国々は地雷被害 者に対しての保護とリハビリテーションへの支援、社会的経済 的に元のように融け込ませる努力をするべきであるとしてい る。締約国には支援を提供する確かな義務があるのである。

以下に述べる"ICBL生存者支援ガイドライン"は、地雷 被災者が社会における生産的貢献的なメンバーとしての役割を 再開できるようにと、治療、リハビリテーションの効率的なプロ グラムを開発している、寄付者を含む関係者を助ける意図を もって策定された。

これらICBLのガイドラインは地雷の被害者やその家族を含む不自由を被っている人々全てのための医学的な治療、身体的リハビリ、精神的社会的支援、教育、経済的な機会を向上させる ためのプログラムを推し進めるものである。また同様に、地雷被 災生存者の10の基本的人権の具体化もしている。

生存者の権利
地雷で負傷した何十万もの男性、女性、子供たちは生産的な 生活を再開するための治療と支援が必要である。地雷による被害者とは、地雷によって障害を持ったり、死亡した人の家族、地 雷に脅かされているコミュニティを含むことに注意する。地雷 の生存者もまた全ての人々によって享受される権利と保護を共 有すべきである。世界人権宣言、国連障害者機会均等化基本法 (*)に従う。→the U.N Standard Rules on the Equalization of Persons with Disabilities

ICBLの提唱する10の権利

  1. 生存者が自らの健康と幸福に関わる全ての決定に全面的に参加する権利。資格のある開業医を選ぶ権利及び治療の質、製品、サービスについての関心事への発言権を含む。
  2. 包括的なリハビリテーション及び回復に関する身体的、精 神的、社会的、経済的側面についての情報にアクセスする 権利
  3. 生存者が法的保護及び自らの関心を主張し自らの利益を 保護するために公式な法定の申し立てメカニズムを有す る権利
  4. 地雷被害者の家族が必要な救援や支援サービスを受ける権利
  5. 教育、訓練、移動、輸送を助ける救援物資、設備を入手する権利
  6. 能力と資格に見合った雇用への権利
  7. 安全な移動や輸送を許す環境を有する権利
  8. 能力に見合った教育を受ける権利
  9. 生存者が社会に自由かつ平等に参加する権利
  10. 社会的、経済的に融け込むのを促進させる仲間の支援、娯楽、職業的資源に関する権利

プログラムのガイドライン
▽救急医療
地雷汚染地域におけるヘルスケアワーカー及びコミュニティ ワーカーは、地雷その他によるトラウマ(精神的外傷)、負傷に対 し、効率的に応じるための応急救護を教育されるべきである。地 雷で負傷した人の半分が病院へ行けずじまいになっていると見 積もられている。多くの人は死亡しているのである。精神的外傷 や致死量の出血に対応する応急救護の訓練こそが、地雷の負傷 者が緊急の医療ケアを受けられるまで生き延びるチャンスを増 加させる。地雷回避教育は、地雷負傷者への対応、特に救護のた めの地雷汚染地域への入り方、大量出血の止め方を網羅すべき である。医療ケアへのアクセスを向上させるための準備として、 コミュニケーション及び輸送システムにおける公的セクターと 地域による行動、投資計画を統合すべきである。

▽継続的な医療ケア
医療設備は、基本的な標準に見合う医療ケアと生活用品を有 するべきである。
地雷の影響がある国々の医療施設は、地雷負傷者に効率的に 対応するためのもので、ハイテクである必要はない。その施設 は、清潔な器具と水といったある程度の基本的で最小限の要求 を満たすべきである。そして技術のある外科医、看護婦、医療ス タッフの幹部による治療が行われるべきである。外科医にとっ ての有用な訓練には手術室、緊急治療に関する基本的なマニュ アル、フォローアップが含まれる。

▽身体のリハビリテーション、人工補綴、補助器具
人工補綴を含むリハビリテーションサービスは、安全な使用、 メンテナンス、修理を確実にし、不自由な人々の生活の質を向上 させるようにデザインされるべきである。また視力低下、盲目、 耳の不自由、麻痺など肢の喪失以外の地雷負傷に関わる物理療 法や治療のための訓練と資源にも注意すべきである。
多くの場合、切断手術した人の最初の義足は一ヶ月はズレや すく、そしてうまくフィットしない。その時は調整と交換が必要 になる。適切にフィットしない人工補綴は皮膚の破れや感染と いった問題を引き起こし、さらに切断手術をしなければならな いという事態に繋がってしまう。義足をつける何週間か何日か 前に残りの肢を包むことは結果を良くし、ソケットのフィット を長続きさせる。物理療法では2次的な問題やけがを防ぐため、 補助器具の適切な使用を確実にすることが必要である。

▽精神的、社会的支援
地域ベースの仲間の支援グループはコスト効率がよく、精神 的、社会的な面での健康回復に有益である。そして心身が不自由 な人々のニーズを満たしたり、救助するために利用可能な資源 について、地域の人々を教育する手段ともなる。
西洋型の個人主義化された治療法と心理検査は精神的外傷を 持つ地雷患者にはむしろ有害であり孤独にさせるものである。 精神的支援は地域ベースで行われ、文化的に適合した支援を提 供する保健医療、ソーシャルワークの地域の専門家を含むべき である。地雷被害者の家族は回復において重要な役割を果たし ており、負傷した家族のために治療、教育と支援を受けるべきで ある。リハビリと社会復帰が進んだ生存者は仲間の支援をよく 受けていた。トラウマとその回復に関する研究は、仲間の支援を 通して表現される共感と慎重さがよい治療結果を生むことを示 している。事実上精神的支援サービスがまったくないような紛 争後の国々では、投資は、有能で地域に根差したソーシャルワー カーの雇用と訓練に費やされるべきである。

▽経済的統合
支援プログラムは地域のインフラと施設の経済的な開発・教 育を通して、地雷の影響を受けた地域の不自由な人々の経済状 態を向上させるために行われなければならない。
生存者の経済状態は彼らの住む地域の経済状態に大いに依存 する。雇用機会、収入を生むプロジェクト、識字訓練や職業訓練、 年季奉公、仕事の委託などは生存者の継続可能な生活と地域の 発展に貢献する。地雷生存者支援は慈善事業ではない。よく配慮された開発政策なのである。

▽アドボカシーと公的教育
国の法律は地雷生存者を含む全ての障碍をもつ市民にとって 効果的な治療、保護を促進させるべきである。
心身不自由な人々は差別に対する法的保護、治療やサービス へのアクセスができるようなレベルの保障を持たねばならな い。生存者は自分の関心事を主張したり利益を守ったりするた めに法的な申し立てへのアクセスをすべきである。各政府は不 自由な市民のニーズに関して社会的な認知を向上させる責任、 不自由な人々に対する非難に立ち向かう責任がある。地域の教 育は不自由な人々の能力とリハビリ及び社会的サービスの利用 可能性を宣伝、公表する運動を含むべきだろう。

▽受け入れ許容力の増強と持続可能性
はじめに、生存者支援プログラムはプロジェクト策定のため 地域の生存者収容力をあげる努力をして地域のワーカーを訓練 しなければならない。
長期的に生存者を助けるために地域の世話人、保健の専門家、 訓練士に関して地域のキャパシティを高めることを必要とす る。公的・私的な寄付者は地雷被害者とその家族、コミュニティ、 不自由な人々への支援組織の教育と治療を強化する全ての社会 的セクターの地域インフラに投資すべきである。許容範囲拡大 にはオフィス管理、財務管理、地域のものを利用した人工補綴ク リニックでの仕事、コミュニケーション戦略、識字、言語訓練、世 話人と生存者への教育といった一連の活動を含むべきだ。

▽アクセス
心身不自由な人々は多様なサービスと支援に対し十分にかつ オープンにアクセスできるべきである。
物理的環境、リハビリテーション、社会的、経済的プログラム に対する十分でオープンなアクセスは社会の全ての側面におい て機会を均等にするための方法である。不自由な人々は応急救 護、緊急及び継続的な医療的治療、身体的リハビリテーション施 設へのアクセスを与えられるべきである。雇用機会、スポーツと レクリエーション、建物と公共スペース、安全な土地と土地の保 有、利用可能なサービスとプログラムに関する情報とコミュニ ケーションへのアクセスなどがそれにあたる。

▽データ収集
調査実施者はインタビューで地雷被害者に接触する前に地雷 被害者とその家族が経験したトラウマと回復に関する問題に敏 感になるように訓練されねばならない。
生存者のインタビューを含むデータ収集は、トラウマを大き くしたり、期待を与えたり、色々な組織によって繰り返し行われ るインタビューで被災地域の人々を疲れさせたりしないよう に、細心の注意を払わねばならない。そうすることで情報収集は 人道主義的行動となり、地域社会において被災者を経済的、社会 的に融け込ませるためのサービスを向上させることへ寄与する であろう。